その男は”悪霊”と恐れられた。
井上家を出て、引手見習いの宇佐の世話になっていた少女ほうは、舷洲の斡旋によって加賀殿が幽閉されている涸滝屋敷に下女として住み込む。
二十日あまり過ぎたある夜、涸滝屋敷に曲者が侵入する。逃げ込んだ部屋でほうは加賀殿とはじめて顔を合わせる。
そして、ほうは加賀殿から手習いを受けるため部屋へと通うことになる。丸海藩の内紛が複雑に絡みながら、”悪霊”と恐れられた流罪の男と無垢な少女との邂逅そして魂のふれあいが……。
あまりに哀しくも切ない結末。清冽な感動と余韻を残す宮部ワールドの金字塔遂に完結!